宇治という土地に深く根ざして
江戸前期より、茶人・小堀遠州の好みの茶器を焼く窯「遠州七窯」のひとつに数えられた窯元、朝日焼。四百年に渡る歴史のなかで各時代の当主が宇治の土を自ら掘り、遠州の『綺麗さび』という美意識を受け継ぎ、茶の湯の陶器を制作してきました。約百五十年前の八代目の頃に、日常的に使いやすい煎茶にふさわしい磁器が加わり、当代の十六世豊斎さんまで宇治茶と関わりながら受け継がれてきました。
江戸後期に完成された朝日焼オリジナルの煎茶器「河濱清器」(写真上)は、いまも職人の手作業により一点一点ロクロで優美に形作られています。淡く少量ずついただく宇治茶に適し、理にかなったシンプルで美しいフォルムは、時代を越えて愛用されています。
お茶への思いを育む空間
宇治川の東、宇治橋から緑豊かな小道を歩くこと5分、趣きある平屋の店舗がみえてきます。草花が植えられた庭を抜けて中に入ると、手前にショップ、左手に大きなダイニングテーブルが置かれたイベントスペース、中央にギャラリー、奥に茶室があり、茶文化をそれぞれに体感できるようになっています。
「子供の頃、祖父に呼ばれてお茶を入れてもらい、一緒に飲んだ思い出があります。会話が弾んだわけでもないのに鮮明に記憶に残っている、お茶はコミニケーションツールなんですね。この空間で感じていただいたことがきっかけに『生活の中でひと時、おいしいお茶を愉しむ時間』を取り入れていただければ嬉しいことです。」とご当主。作家活動とは別に時代にあった茶器のあり方を提案されています。
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朝日焼 shop & gallery
京都府宇治市宇治又振 67番地
☎ 0774-23-2511
■ 営業時間:午前10時~午後5時
■ 定休日 :月曜日(祝日の場合は翌日)・毎月最終火曜日
朝日焼十六世 松林 豊斎 Matsubayashi Hosai
1980年、朝日焼十五世松林豊斎の長男として生まれる。2003年、同志社大学法学部を卒業。その後は京都府立陶工訓練校にて轆轤を学び、父豊斎の許で修行。2015年英国セント・アイブスのリーチ窯にて作陶。フランスのギメ東洋美術館にて作品展示と茶会。在仏日本大使館、在リヨン領事事務所に作品寄贈。2016年、平等院浄土院にて朝日焼十六世松林豊斎を襲名。高円宮妃殿下より「朝日」の印を拝領する。
世界初の無煙化による登り窯『玄窯』の前にて。