目で涼をとる、匠の知恵。
中国から渡ってきたうちわは、日本で誕生した扇より、歴史が浅いように思いがちですが、紀元前に中国で誕生し、飛鳥時代にはすでに日本で使われていたようです。平安時代に入り、折り畳める扇が発達したので、うちわはむしろ儀式的な使われ方をし神事や祭礼などに用いられ、貴族が顔の前にかざしたり、時の権力者への献上品にもなりました。庶民の間に普及したのは江戸時代になってからだったようです。
その風で「魔」を打ち払う縁起ものとされ、贈答品として喜ばれてきました。
『京うちわ』は紙を貼った面と、持ち手となる柄を別々に作る『差し柄』構造。宮廷で用いられた『御所うちわ』がルーツとされています。阿以波のうちわはどれも職人の手によるもので、竹は丹波の四~五年もの、紙は越前・八尾(やつお)の手漉き楮紙(こうぞし)を、柄の部分は栂(とが)・杉材を用いるなど、国内の材料にこだわります。繊細な意匠の「両透うちわ」は先代が創作したもの。暮らしの変化に伴い実用としてのうちわの需要が見込めないなか、視覚で涼感を楽しむ飾りうちわを、伝統の技を生かし開発したものです。
阿以波の京うちわは、まさに伝統と革新の賜
「贈答品として人気の草花をあしらったうちわは、毎年新作を発表しています。同じ朝顔を文様化するにあたってもトリミングを変えたり、花の向きや大きさに工夫を凝らし、新鮮さを出すよう心がけています。」と饗庭さん。京うちわ一筋に生きる老舗でありながら、柔軟に時代の変化を見据えて新しい意匠を生み出しています。
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京うちわ 阿以波(あいば)
京都市中京区柳馬場通六角下ル
☎ 075-221-1460
http://kyo-aiba.ocnk.net/
当主 饗庭 長兵衛 CHOBEI AIBA
300年以上の歴史を誇る「京うちわ」の専門店『阿以波』10代目当主。
1960年生まれ。初代長兵衛が近江の国 “饗庭(あいば)”より、都に出て店を開いたことに始まり、七代目よりうちわ専門店となる。『阿以波』のみとなった京うちわの製作技術を今に伝えると共に、時代にそった「うちわ文化」を創造し続け、長兵衛の名を代々受け継いできている。