癒される和ろうそくの炎
私たちが、普段目にするろうそくと言えば、仏壇に灯す白色半透明のもの。これは石油からできた石蝋を原料としたキャンドル(西洋ろうそく)で、火にあぶられた蝋は高温で溶けて流れます。これに対して、寺院や茶事で使われてきたのが、和ろうそく。ハゼ(ウルシ科落葉高木)の実からとる木蝋を主原料にし、煤が少なく、蝋が溶けて垂れ流れる心配もありません。寺院にとって、欠かせない性質のろうそくは、和的な穏やかな炎を放ってくれます。
昔ながらの手作業で和ろうそくを作り続けて
和ろうそくには棒型とアールが美しいイカリ型があります。棒型は竹串に芯をさし、右手で回転させながら(上写真)、左手で溶けた蝋を素手で、すくい一層ずつ重ねていく「生掛け」と呼ばれる製法。イカリ型は木製の型に蝋を流し込む「鋳込み」製法で作られています。仕上げに上蝋を生地にかけ、注文に応じてその上から朱蝋や金蝋にするものも。すべて熟練の技に頼る手作業で、1日1工程を基本として、10日前後、制作にかかるとのこと。
「和ろうそくは千年の歴史があり、日本人の暮らしに根付いていましたが、電気が普及するとともに、急速に忘れ去られ、うちが残ってこられたのは、主にお寺に納めていたからです。江戸中期ごろより作り始められたイカリ型の朱蝋は、お寺のお堂で灯したときに一番美しく見えるように調合した代々受け継いできた、うちだけの赤なんです。」と丹治さん。最近は、エコ志向や和ろうそくの炎に癒されると使う人が増えているそうです。
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丹治蓮生堂(たんじれんしょうどう)
京都市東山区星野町 93-28(東大路八坂通り東入ル)
☎075-361-0937
三代目 丹治 潔 Kiyoshi Tanji
1961年京都市生まれ。高校卒業後、大学進学と同じくして、祖父が亡くなり、家業に専念することに。40年余り、主に寺院に向けて、和ろうそくを制作、販売している。初代が400年以上続く歴史を継承する老舗のろうそく店に奉公しているときに店が傾き、そのまま技と道具を引き継ぐことに。昭和13年創業だが、4代目の雄樹さんは500年近い歴史を受け継ぐといえる。
Photos:Yamagata Shuichi (neutral)