伏見人形窯元 丹嘉| culture

[上段左]梅持ち天神、菅原道真公のこと [上段中]狐の太鼓乗り [上段右]疳の虫封じ犬 
[中段左]饅頭喰い [中段中]熊乗り金時 [中段右]袋引き兎
 [下段左]牛乗り天神 [下段右]鯛乗り童子
Photos:Yamagata Shuichi (neutral)

ユーモアに富んだ庶民的な意匠

ユーモラスで、親しみを感じる温かな造形、その一つひとつに素朴な味わいがある「伏見人形」。全国の土人形の元祖と言われる伝統工芸品です。
古来より良質の粘土が採取できる京都・東山連峰の南端に伏見稲荷のある稲荷山は位置しています。その近辺に、土器や土偶を製作する土師部(はじべ)が古墳時代の昔より暮らしており、伏見稲荷大社の祭礼で使われる土器にはじまり、参詣の土産物ものとして土人形が製作されるようになりました。それが「伏見人形」の起こりとされています。

表面と裏面、それぞれの原型に粘土を埋め込み、型から抜いて表裏をつなぎ合わせることで成形。それを乾燥させ、低温で素焼きする。 Photos:Yamagata Shuichi (neutral)

人形の意匠がメディアとなって全国へ

江戸時代から明治の初め、全国各地へ北前船によって多量に運ばれ、各地の停泊地で売られ最盛期を迎えます。この拡販の影響で「伏見人形」のコピーが各地で作られるようになり、郷土人形の普及に大きく影響を与えることに。新聞やテレビのない時代「伏見人形」の意匠がメディアとなり朝鮮通信使や象が京都にやってきたニュースなども伝えたようです。

素焼きしたものに胡粉(ごふん)を塗り、泥絵の具で彩色。 Photos:Yamagata Shuichi (neutral)

人形が持つストーリーに心を傾けて

「伏見人形といえば、饅頭喰い※や干支の人形を思い浮かべる方も多いかと思いますが、うちでは二千以上の原型を保管しています。天神や西行の人気キャラクターから、縁起物、歌舞伎物、説話物や、民間信仰と結びついた物まで庶民の暮らしと密接に結びついたものが多くあります。それぞれの背景にある物語とともに受け継いでいければと思っています。」と店主の大西時夫さんは穏やかに語られていました。

※饅頭喰い人形:
子供が二つに割った饅頭を、両手に持っている立像で、「父母のいずれが好きか」と問われた際、その童子が饅頭を二つに割って「どちらが美味しいか」と反問したという教訓話に取材した物。子供が利口になるまじないや、安産祈願に奉納された。 

牛のり西行 Photos:Yamagata Shuichi (neutral)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

伏見人形窯元 丹 嘉 (たんか)
京都市東山区本町22丁目504番地
☎ 075-561-1627
www.tanka.co.jp

7代目 店主 大西 時夫 TOKIO ONISHI
1948年生まれ。寛延年間(1750年頃)創業の伏見人形窯元「丹嘉」の当主。
「丹嘉」では、春から夏にかけて型を起こし、夏に天日で干した後、窯で素焼き。膠の状態がいい秋から冬、春に「顔描き」をする季節にそった工程を250年以上、繰り返してきた。昔は薪の窯だったが、今は電気炉で素焼きする。人形の背景にある物語を伝承しつつ、8代目貞行さんとともに、日々制作を続けている。

Photos:Yamagata Shuichi (neutral)

PAGE TOP